2018年10月の記事

今回ご紹介する 摂食嚥下口腔衛生委員会 の取り組みは、 「見ながら食べるためのポジショニング」です。

見ながら食べることの大切さ-2

これは、ある利用者様の目線で食事前のテーブルを撮影した写真です。 これから食べようとしている器の中の料理がほとんど見えません。

利用者様は一品ごとに器を手に取り、見える位置に抱え込んで食べることになります。 麻痺などで器を持てない利用者様になると、何が入っているかもわからない器に手を伸ばし、手探りで食事をとるような状態になります。

これには “不適切なテーブルの高さ” “食事の姿勢” など様々な原因があり、 “車椅子で滑り座りになる” “テーブルとの距離が遠い” といった状態も加わると、一段と目線が下がってしまいます。

島津乃荘 ではテーブルの高さに合わせた椅子でのポジショニングを行い、 無理なくしっかり食事を見ながら並べられた料理の中から食べたいものを選べるよう、 お一人お一人の状態に合わせた食事のサポートを行っています。

五感の全てで楽しみながら「食事」をいただくということ

見ながら食べることの大切さ-1

私達は、味、彩り、香り、食感など、五感の全てで楽しみながら「食事」をいただきます。 利用者様に美味しく食べていただくためには、食事に関する感覚を刺激することが大切になります。 それが嗜好を読み取るヒントになり、特に認知症の方は過去の回想記憶が引き出されることもあります。 こうした個々の取り組みが、それぞれの利用者様に合わせた食事のご提供につながっているのです。

食卓の席についてご飯を目でみて楽しむ
最初に口にする料理の器を手に持つ
彩りや香りを楽しみながら口に運ぶ
味・食感・音などを楽しみながら食べる
もぐもぐしながら次はどれを食べようかと食卓をみる
次に食べるものに箸を伸ばす

ぜひ、食事を「見て」楽しんでいただけるようなサポートを実践してみて下さい。

先日 島津乃荘 に発足した 摂食嚥下口腔衛生委員会 の取り組みとして 今回ご紹介するのは、「利用者様に合う食具選び」です。 この日改善に取り組んだのは次のような困難を抱える利用者様で、食べこぼし・取りこぼしてしまいやすい状況にありました。

  1. スプーンをしっかり把持することが困難
  2. 器から食物をすくい口に運び捕食する際の前腕の回内・回外運動が困難
  3. スプーンホールの側面で器の縁に向けて動かしてすくう
  4. スプーンの先端方向からの捕食が難しく側面から捕食する

利用者様に合う食具選びの様子-3

まずは、食事(をすくうところ)がご自身の目でしっかり見えるようポジショニングします。 そして大きな食事動作を必要としないよう、テーブルとの高さの差を調整しました。

更に 前腕の回内・回外運動を代替する「曲りスプーン」に、把持力を補完する「グリップ」をつけます。 スプーンの種類(ホールサイズ・重さ・形等)とグリップの太さの組み合わせを数種類用意し、実際に試していただきました。

スプーンを曲げる角度は、利用者様の食事動作にあわせて調整していきます。

利用者様に合う食具選びの様子-4

利用者様は「これがいい」「うまくすくえる」など、しっかりと使用感を伝えてくださいます。 実際に使っていただくと、取りこぼしや食べこぼしが目に見えて減りました。

お話ししている中で「こぼしてしまって申し訳なかった」との言葉を漏らされる場面がありました。 “食具を選ぶ” ということは、食事を綺麗に食べられるようになる、というだけではなく、 利用者様の自尊心にも大きな影響があるのだと、改めて考えさせられました。