当施設では、食事はもちろんのこと、日々飲んでいただいているお茶にも「嚥下機能に合わせたとろみ」をつけてご提供する場合があります (関連記事:食事中の咳き込みへの対応)。 この日は、利用者様の気持ちを知り、正しいお茶とろみの付け方を覚えてもらうための研修を行いました。
ご家庭では片栗粉で とろみをつける方法をご存知の方は多いと思います。 介護施設ではお一人お一人の嚥下機能に合わせてご提供する必要があり、 片栗粉のように温度や経過時間などによって とろみの強弱が変わってしまうと、誤嚥などの危険につながります。 そこで「増粘剤」を用い、その使用量によって安定した とろみをつけます。
一般的に むせやすい方には とろみをつけてご提供すればよいと思われがちですが、 実際には同じ誤嚥でもその原因は多種多様で、必ずしもとろみをつけることが適切とは限りません。
当施設では、嚥下反射が遅れる病態で流動速度の速い水分(0.2秒ほどで咽頭通過)でむせてしまう方を対象に、とろみをつけたお茶をご提供しています。 とろみで流動速度を遅くし、喉頭蓋の反転が間に合うように調整することで誤嚥を防止できます。
一方、嚥下反射は正常でありながら咽頭残留しやすい方へ とろみのお茶をご提供してしまうと、 残留物が次の嚥下や呼気の際に 喉頭内に侵入するリスクが逆に高まってしまいます。
このように、水分の物性(とろみの強弱)は、強すぎても弱すぎても事故に繋がる恐れがあり、 その方に応じた適切な状態でご提供することが重要となります。
この日の研修では、学会分類による基準と島津乃荘における「とろみ」の関係、 増粘剤の正しい量、とろみの付け方におけるポイントを学習しました。
その後、正しい方法で「とろみ弱」と「とろみ強」を作り、スプーンの大きさも変えてみるなど様々な場面を想定しながら実際に飲んでもらいました。参加者からは
- とろみを強くつけると、こんなに飲み込みにくいとは思っていなかった。貴重な体験だった。
- とろみについての研修は初めてだった。もう少し早く研修があってほしかった。
- こんな強いとろみを利用者様にご提供したら苦痛になるのではないかと思う。
この研修で、味・食感・飲み込みやすさなどを体感しつつ 利用者様お一人お一人の気持ちになることができたようです。 今後の介助時の一口量や介助方法の参考にしてもらいながら、日々改善を続けていきたいと思います。