食事の質向上の取り組み
栄養科では様々な側面から食事の質向上の取り組みを行っています。
その中の1つである、主に咀嚼(そしゃく:食べ物を噛み砕くこと)機能が低下した経口摂取 (自らの口で食事する:参考「経口維持への取組み」) の利用者様向けの「ミキサー食」の改良について紹介します。
食事の質検討会 の様子や、 資料:栄養科「公開講演」いつまでも安全に食事を楽しんでいただくために もぜひご覧ください。
ミキサー食の改良
島津乃荘での経口摂取の利用者様の食事は、誤嚥(ごえん)防止のために具材を加工し複数種類の食事形態で提供されています。 その中で約35%を締めるミキサー食は、とろみ剤にてとろみをつけ誤嚥が起きないよう工夫しています。
しかし、誤嚥が起きにくい反面、粘り気があり飲み込みにくいという欠点がありました。
ミキサー食の段階的改良フロー
-
第1段階飲み込みやすさの向上と誤嚥防止の両立
各種とろみ剤の検証 -
第2段階見た目の改善と混ぜ込みやすさの向上
とろみ剤配合による最適解の検討 -
第3段階食材による影響の抑制
食材(献立)ごとの最適なとろみ剤の検討 -
第4段階利用者に合わせた個別性の向上
利用者の嚥下機能・食事の様子に合わせた検証
第二段階:見た目の改善と混ぜ込みやすさの向上
ここでは「第二段階:見た目の改善と混ぜ込みやすさの向上」の検証について一部をご紹介します。
現在、食材や献立により使い分けをしている2種類のとろみ剤にはそれぞれ特徴があり、 「第一段階」の検証により主食となる粥ペーストはとろみ剤Aからとろみ剤Bに変更されました。
しかし、とろみ剤Bにより飲み込みやすさが向上した一方、 食事にとって重要な見た目(形状)や他の具材との攪拌(かくはん)性で改良するべき点がありました。
そこで、2種類の特徴の異なるとろみ剤を配合することで、両方の利点を活かしたミキサー食の状態を作れないかを検証しました。
評価の様子
検証は、2種類のとろみ剤で6パターンの配合を作成し、同条件にてそれぞれ粥ペーストと攪拌して5パターン作成し、出来上がりの見た目・飲み込みやすさ・他のおかずペーストとの混ぜ込みやすさを他職種・複数人で評価しました。
食事介助を行う介護スタッフとその他の職種では注目する点が異なるため評価が分かれましたが、 総合評価及び見た目と飲み込みやすさのみでの評価でも、「5」のとろみ剤Aを10%・とろみ剤Bを90%の配合で混ぜた状態がバランスのよい結果となりました(青:高評価 ピンク:低評価)。
総合 | 評 価 | ||||
---|---|---|---|---|---|
見た目 | 飲み込み | 混ざり具合 | 計 | ||
1 | とろみ剤 A(100%) |
6.0 | 2.3 | 6.5 | 14.8 |
2 | A(50%) B(50%) |
5.3 | 6.0 | 6.3 | 17.6 |
3 | A(40%) B(60%) |
5.7 | 6.3 | 6.2 | 18.2 |
4 | A(25%) B(75%) |
6.0 | 6.6 | 5.4 | 18.0 |
5 | A(10%) B(90%) |
6.9 | 7.0 | 4.6 | 18.5 |
6 | とろみ剤 B(100%) |
6.6 | 6.8 | 3.3 | 16.6 |
職種別 | 介護スタッフ | ||||
---|---|---|---|---|---|
見た目 | 飲み込み | 混ざり具合 | 計 | ||
1 | とろみ剤 A(100%) |
4.7 | 2.3 | 7.0 | 14.0 |
2 | A(50%) B(50%) |
5.1 | 6.0 | 5.0 | 16.1 |
3 | A(40%) B(60%) |
5.3 | 6.7 | 5.7 | 17.7 |
4 | A(25%) B(75%) |
5.3 | 7.0 | 6.0 | 18.3 |
5 | A(10%) B(90%) |
6.0 | 6.7 | 5.0 | 17.7 |
6 | とろみ剤 B(100%) |
6.0 | 7.7 | 2.3 | 16.0 |
職種別 | その他職種 | ||||
---|---|---|---|---|---|
見た目 | 飲み込み | 混ざり具合 | 計 | ||
1 | とろみ剤 A(100%) |
7.3 | 2.2 | 6.0 | 15.5 |
2 | A(50%) B(50%) |
5.5 | 6.0 | 7.5 | 19.0 |
3 | A(40%) B(60%) |
6.0 | 6.0 | 6.7 | 18.7 |
4 | A(25%) B(75%) |
6.7 | 6.2 | 4.8 | 17.7 |
5 | A(10%) B(90%) |
7.8 | 7.3 | 4.2 | 19.3 |
6 | とろみ剤 B(100%) |
7.3 | 5.8 | 4.2 | 17.3 |
本来の食事の形態としては摂取前に混ぜないことが理想(利用者様自身の味覚上の拒否で摂取量が減ることを防ぐために行う場合があります)であるため、 評価項目では「見た目」「飲み込みやすさ」を優先し、「混ぜ込みやすさ」は補助評価項目として判断しています。
今回は粥ペーストでの配合検証でしたが、見た目(形状)の影響を受けやすいおかずについても第三段階で検証し、 ミキサー食にとって最適な状態を探り、調理効率性及びコストも合わせて決定していきたいと考えています。
今後は、今回の検証の結果をもとに第三段階となる食材(献立)ごとの最適なとろみ剤の検討を行うことで 「食材による影響の抑制」に取り組んでいく予定です。
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