認知症ケア委員会
お一人お一人に合わせた質の高い認知症ケアを
認知症ケア専門チーム「認知症プロフェッショナル」
厚生労働省の発表によると「認知症の方の高齢者に占める割合」は増加の一途をたどっています。 とても身近になってきた「認知症」について、医療・福祉関係者が専門的な支援を できるようにしていくのはもちろんのこと、 地域社会全体に認知症についての正しい理解や知識を広めることや、 認知症とともに “よりよい” 生活を送るための幅広い支援の必要性が高まっています。
医療・福祉サービスをご提供する 敬和ヘルスケアグループでは、 2016年、それぞれの分野の経験豊かなスタッフの中から養成した人材による 認知症ケア専門チーム「認知症プロフェッショナル」 を立ち上げました。
この「認知症プロフェッショナル」を中心にグループ全体で連携をとりながら、 認知症の方やそのご家族様への支援を切れ目なく行うことで、 病院・施設・在宅など、どのような環境でも安心して生活していただけるような、 お一人お一人に合わせた "より質の高いサービス" をご提供していけるよう、日々取り組んでいます。
島津乃荘の更なる取り組み「認知症ケア委員会」
島津乃荘では、「認知症プロフェッショナル」による活動に加え、 確かな知識に基づいた支援をより幅広くご提供するため、 2021年1月、“認知症ケア委員会” を設立しました。
「認知症ケア委員会」の主な活動内容
- 専門知識に基づいたケア計画 認知症を持つ方を一人の人として尊重し、その方の視点や立場に立って理解しケアを行う「パーソンセンタードケア」 を基本とした「お一人お一人に合わせた個別ケア計画」の作成を支援します。 この計画に基づくケアをご提供することによって生活のしづらさやBPSD(行動心理症状)を改善することができます。
- 潜在能力を引き出す 生活の中で不安や負担などを感じる環境を把握・軽減・改善し、「自分でできる事」「やりたい事」を支援します。 できた時の満足感や楽しさ、またやりたいと思う気持ちなど、意欲の向上を図っていくことで、 その方が持つ能力をうまく環境に適用できるようになります。
- スタッフの認知症教育と理解 スタッフの認知症についての知識やケア方法への理解度を把握し、 基礎的な認知症についての知識やケア方法の正しい習得をサポートすることによって、 施設全体の認知症ケアの質の更なる向上を図ります。
- 早期発見と適切な対応 認知症症状を正しく理解することで、毎日の生活の中での症状の早期発見や危険を予測します。 声掛けや傾聴といったコミュニケーションでの症状の変化などにも気を配り、 多職種との連携をとりながら安心して過ごしていただける環境作りをしていきます。
- 心豊かな暮らしのお手伝い 認知症を持つ方だけでなく、利用者様全員が日々の生活の中で感じる不安や不快を軽減し、 もっと笑顔で過ごしていただけるよう取り組みます。
- 地域の認知症相談窓口 認知症に関したお困りごとがある地域の方がいらっしゃいましたら、いつでも当施設へご相談ください。 少しでも力や助けとなれましたら幸いです。 私たちが積み重ねた経験と知識を活用し、より住みやすい理解ある地域社会の発展へ貢献してまいります。 詳しくは「島津乃荘-紬-(つむぎ)」へお問い合わせください。
認知症ケア委員会 委員長
認知症介護実践研修後の利用者様の変化
認知症介護実践研修から3か月が経とうとしていますので、以前取り上げた職場実習のその後を報告したいと思います。
そもそものきっかけは、A様の食欲がなくお食事をほとんど残されていたことです。メインのおかずには手を付けられず、どうすれば召し上がってくださるのか皆で頭を悩ませていました。
そこで認知症介護実践研修でA様を支援することにし、お食事前のメニューの説明の声掛けと、ごはんとおかずを交互に盛り付けることで少しでも食が進むよう色々と試行錯誤と工夫をしました。
利用者様と全介護スタッフの協力のもと、朝昼晩のごはんとおかずの交互盛り付け作戦を続けていると、徐々に食べる量が増えてこられました。
最近では完食されることが増えたので、もうそろそろ交互作戦は終わりにしてもよいのではないかとそのまま配膳してみると、どうでしょう、何事もなかったようにきれいに完食されました!
3か月と少し時間はかかりましたが、私たち介護スタッフは全員がびっくりしてとても嬉しくなり、諦めずに続けて良かったと思いました。
その後A様はお食事が楽しみになられたのか、ご自分から「今日のご飯は何やろか?」と聞かれるようになり、自然と食べ物に関する話題が多くなりました。栄養が摂れて肌ツヤも表情も以前より明るくなってこられたように思います。お食事を楽しく食べる事は心や身体の元気や活力になるということが目に見えて表れ、私たちスタッフは学びながら良い経験をさせていただきました。
2024/02/15 認知症ケア委員会 委員長
リクエスト曲を歌おう!
利用者Y様が、3か月半ぶりに以前のユニットへ戻って来られました。
レクリエーションの取り組みで歌を歌う時、歌詞を覚えておられる曲は一緒に歌っては下さるのですが、以前に比べるとあまり声が出ていないようでした。日々の声掛け、挨拶にも「はい」と小さな声で返事をされるので少し心配しておりました。
他のスタッフにこのことを相談すると「この前は『星影のワルツ』を大きな声を出して歌われましたよ。もしかしたらお好きな曲の方がもっと声が出るのではないでしょうか。」とアドバイスをもらいました。私と歌った曲は「くつがなる」「七つの子」「りんごの唄」「二人は若い」などでしたが、私が気付いていなかっただけでまだまだ他にもY様がお好きな曲があったことや、本当にお好きな曲を知ることが出来て嬉しくなりました。
これからは利用者様それぞれにお好きな曲名をしっかりと聞いてリクエストいただき、一緒に楽しく歌うことでQOLの向上に努めていきたいと思います。
2024/01/17 認知症ケア委員会 委員長
認知症介護実践者研修を受けて
7月から10月まで認知症介護実践者研修を受けた後、2週間 A様の職場実習を行いました。内容は、スタッフ全員でケア前の声掛けをすること、食事の献立説明を行うことです。
スタッフ全員で情報を共有し声掛けのケアを統一すると、大声を出されることがなくなりました。また、スタッフが食事の献立をお知らせする事で事前にメニューが分かり食事量が増えるなど、良い効果が表れ始めました。
何よりも A様が穏やかになられ、会話のキャッチボールの口調もとても優しくなられた事をスタッフ全員が感じとっていました。そして取り組んだ事の結果に自分たちでも驚いていました。私自身もこの実習で少しだけ自信が付き、貴重な経験をさせていただきました。認知症という専門分野について今後も勉強していきます。
2023/12/06 認知症ケア委員会 委員長
声掛けで届いた思い
ある利用者様に初めての口腔ケアを行おうと「今からお口の中をきれいにしますね」と声を掛けながら口の中に歯ブラシを入れたところ、 あっという間に歯ブラシを強く噛んで口を開けようとされず、困ってしまいました。
それから毎日 「今からお口の中をきれいにしますからずっと口を開けていてくださいね。ご自分の歯がいっぱい残っていますから歯を大事にしましょうね。」 と声を掛けてから 1本2本3本...と数えながら磨くことを続けているうち、口を開けてくださる時間がだんだんと長くなってきました。
今では「今からお口の中をきれいにしますね」と声を掛けるだけで口を開けてくださるようになっています。
きちんとコミュニケーションを取ることで口腔ケアを理解していただけたことが伝わってきて、とても感激しています。 これからもこの感激を忘れず、コミュニケーションを大事にしたケアを続けていきたいと思います。
2023/07/21 認知症ケア委員会 委員長
竹の子とゴボウ
ある日、利用者様がひとりで一生懸命お話しをされているのが聞こえてきました。 しばらく聞いていると、どうやら竹の子やゴボウのことを話されているようです。
「竹の子がどうしたんですか?」
と声をかけると、
「竹の子は今 掘りに行ってもらっている」
と詳しく聞かせてくださいます。
今が竹の子の季節なのを感じられているのかもしれません。
そして
「煮しめを作るからゴボウが欲しい」
とおっしゃいます。
「それでは、ゴボウは私が準備しますね」
と答えると、
「ありがとう」
と大変 喜ばれました。
この利用者様は長年 食料品店を経営していた経歴をお持ちで、その頃の体験が甦っていたのかもしれません。 記憶の中の人物と現実を交えて会話をされる様子はいきいきとした表情で、私もおいしそうな煮しめが思い浮かびました。
利用者様の生活歴から多くの会話を引き出し寄り添うことができた時間でした。
2023/06/19 認知症ケア委員会 委員長
言葉の持つ力
島津乃荘では施設全体のスキルアップを目指し、委員会などを中心に施設内研修を定期開催しています。 私たち認知症ケア委員会では「認知症の基礎テスト」「認知症の方へのケア方法」「コミュニケーション技法」などの研修を行ってきました。 その中から「スピーチロックについての研修」をご紹介します。
スピーチロックとは
介護する側が何気なく使う言葉や声掛けが利用者様の気持ちや動きを抑制してしまう行為。
「ちょっと待っていてください」「座っていてください」といったような声掛けに対して 「なぜ待たなければいけないのか」「いつまで座っていればいいのか」と、 どうすればいいのかが分からずひたすら待ってしまったり不快に思われたりする、というものです。
スタッフが急いでいる時や何かをしている最中などに無意識に出てしまっている声掛けにより、 知らず知らずのうちに利用者様が生活の中で制限されたり不快に感じたりする状況が生まれ、 更にはあきらめや意欲低下を招く原因となる場合があるのです。
これを防ぐには、具体的な内容をわかりやすく伝える工夫が必要となります。 次のように「相手に判断をゆだねる」言い方に変えることで、認知症の方の尊厳を守りながら分かりやすく伝えられると言われています。
- ~しているので、あと ○ 分お待ちいただけますか。
- ○○ するまで待っていただけますか。
- ~すると危ないので座っていただけませんか。
こうした言葉遣いや興奮時の対応などの研修を行ったところ、参加者からは次のような声が聞かれました。
- 「つい言ってしまう言葉だった」
- 「スピーチロックにあたる言葉ではないか意識していきたい」
- 「互いに注意し合える環境になればいいと思う」
- 「言い換えの言葉、相手に判断をゆだねる言い方を心がけていきたい」
この回は、日頃からの言葉使いを自覚し振り返る良い機会となりました。 学びを機にスタッフ全体が再度意識し、利用者様に快適に過ごしていただけるようなケアを実践していきます。
2022/10/03 認知症ケア委員会 委員長
想いをくみ取る
私たちは日々認知症の方と接する中で、その方がどうしてほしいのか、どうしてこういう行動に出ているのかと考える場面が多々あります。
ある利用者様にご飯を提供すると「これいくら?」「ここの泊り代はいつ払えばいいの?」と言われます。「ご飯代はいらないですよ」と言っても「どうして どうしてお金払わないの?」と何度も言われ「いいです。帰りますから」と言われてしまいました。こちらはそんな心配いらないので食べて下さいと言っても、認知症の利用者様からしたら、知らない所でお金も払わないでご飯を食べて泊まるって... 確かに私でも少し不安になります。
何度目かでその利用者様に「後でまとめた請求書を持ってきますね」「月末払いになります」と言ってみると「そう。じゃよろしくね」と、納得されるということがわかりました。
またある利用者様に「あなた忙しそうだね 大変ね」と何度も言われたことがあります。「ありがとうございます 大丈夫ですよ」と言ってもまた「あなた忙しそうね 大変ね」と言われるので、「忙しいです。手伝って頂けますか」と伝えると、「私にできるかしら」と言われ「〇〇さんが手伝ってくれたらすごく助かります。お手伝いお願いできますか」と尋ねると、「そんなにできないけど手伝いがあったら言ってね」と笑顔で言われました。
なにか手伝いたいと思っている利用者様の気持ちをくみ取り、実際に出来ることではなくても「助かります。お願いします」と声掛けしたことで、利用者様も私たちも笑顔で温かい気持ちになりました。
認知症と聞くと徘徊や意味の分からない行動をするといったイメージがあるそうですが、認知症の方にはその行動をする理由があり、その理由を言葉で説明したり、達成することが出来ずどうすればいいかわからない状態であったり、不安な気持ちでいたりします。
認知症の方が安心する声掛けは何か、想いをくみ取りケアを行っています。
2022/02/15 認知症ケア委員会 委員長
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