食事中の咳き込みへの対応

今回は、食事中の咳き込みが強く、食事のたびに疲労される利用者様への対応を紹介します。

ご自身で食事をとられる利用者様のお一人が、食事中に大変な苦痛を伴う強い咳き込みを繰り返され、 食事のたびに疲労されていました。 食事の様子の観察と一口量や物性の異なる食事での評価を行った結果、 湿性嗄声(しっせいさせい:痰が絡んだようなかすれ声)も確認され、「咽頭残留」 が疑われました。

咽頭残留とは

嚥下圧が不十分な方や付着性の高い物性の食物の嚥下では、1回の嚥下動作では咽頭内がクリアにならず、 食物残渣(しょくもつざんさ:食べ物の残りかす)が咽頭内に付着することがあります。この状態が 「咽頭残留」 です。

咽頭残留の状態は、咽頭全体に膜状に貼りついたり、喉頭蓋谷(こうとうがいこく)や梨状窩(りじょうか)に残ったりと条件によって様々ですが、 次の嚥下時に気道へ流入したり、咽頭に違和感が残ることで咳き込んだりといった問題に繋がります。 この咽頭残留への対応方法のひとつとして、今回は交互嚥下を提案しました。

交互嚥下とは

お茶ゼリー
[今回使用したお茶ゼリー]

異なる性状の食塊を交互に嚥下することで残留物を除去する「直接訓練」の一種で、 付着性の高い食物やパサつきの強い食物の後にゼリー等を嚥下することで、口腔や咽頭の残留物を一緒に嚥下します。

先の利用者様にお茶ゼリーによる交互嚥下を試していただくと、咳き込みはほとんど起こらなくなりました。

交互嚥下

数口に1回はお茶ゼリーを口にして残留物をクリアにしながら食事するようにお伝えしたところ、 利用者様ご自身が咳き込みによる食事のしづらさを認識されていたこともあり、 スムーズに交互嚥下を実行できるようになりました。 現在は、咽(む)せることなく、ご自身で食事をされています。