パンメニューご提供での工夫

摂食嚥下勉強会 のブログ記事 「摂食嚥下障害の方にも食べやすいメニューを検証」で パン粥のご提供について検討した際の様子をご紹介しましたが、今回は 島津乃荘 でご提供している パンメニューについて紹介します。

舌でつぶせるパン

島津乃荘では、パンを好まれる利用者様へ毎週木曜日にご提供しています。 パンの味が好きで、とても楽しみにされている方もいらっしゃいます。

しかし、パンは口腔内の水分を吸収してベタつきやすく、十分な咀嚼・食塊形成・唾液混和・送り込み・適切な嚥下圧 など一連の動作がスムーズに行えないと安全に飲み込めません。 万が一口にたくさん溜め込んでしまうと大きな食塊となり、窒息に繋がる恐れもあります。

捕食時に適切な大きさに調整できない、口腔内に溜め込んでしまう、咀嚼力が低く食塊形成に難がある、 唾液分泌の不足で貼りつきやすい、舌の動きが悪く送り込みに難がある、といったような問題がある方へパンをご提供する場合、 様々な工夫が必要になってきます。

そこで、島津乃荘では「舌でつぶせるやわらかさ」(学会分類:嚥下調整食3程度)に物性調整されたパンを活用しています。

このパンは、耳の部分でもスプーンで容易にすくうことができるやわらかさになっており、 軽い咀嚼様運動があればパン自身に含まれる水分によって適度に溶けて飲み込みやすく、口腔内への残留がほとんどなくなります。 そのうえ普通食と同じようなパンの姿でご提供できるので、食事の楽しみをご提供するという観点からも大変有効です。

パンをスプーンですくう

普通食の方にご提供しているパンに比べると少しカロリーが不足してしまっていますが、 チョコレートソースやフルーツソースなどを添えることで、 味のバリエーションを増やしながらカロリーを補填するように工夫しています。

他にも、咀嚼力が弱くミキサー食でご提供させていただいている方にはパン粥をご提供し、 味や香りだけでもパンを感じていただこうと工夫しています(参考記事「摂食嚥下障害の方にも食べやすいメニューを検証」)。

特別養護老人ホームを含む高齢者入所施設における楽しみの調査によると、 食事は第一位という結果となっています。 今後も、食事を施設生活での楽しみにしていただけるよう努めていきたいと思います。