食事時のポジショニングの実技研修( ベッド編| 車椅子編)に続いて、今回は「ベッドサイドスクリーニング」の実技研修が実施されました。
まずはじめに講師の方から次のようなお話がありました。
スクリーニングは食べることや飲むことが できない ことを評価するのではなく、 現在どのような状態にあり どのようにすれば食べたり飲んだりできるようになるのか を検討する材料を得るために行うものです。 そのために、「食べるための力を最も発揮できる状況」 を作ってから評価を行うことが大切です。
残念ながら医療機関によってはVFやVEの結果をもとに 「食べることができない人」 と決定づけてしまい、 口から食べるための支援を行わないところもあります。
そのようなことになってしまわないために、直接食べ物や飲み物で行うベッドサイドでのスクリーニング技術を身につけ、 病院からの評価だけではなく、利用者様の摂食嚥下がどのような状態にあるかを自分の目で見て把握できるようになり、 口から食べるための支援を検討する上での情報を得られるようにしてほしいと思います。
今回は、数あるスクリーニングの中から「反復唾液飲みテスト」「改訂水飲みテスト」「フードテスト」の解説があり、 実技として「改訂水飲みテスト」と「フードテスト」の手技を学びました。
一般的なテキストでは簡単な手順と評価基準のみが記載されていますが、 今回の実技で学んだのは次のような大変複雑な工程でした。
- 評価するための環境を整える(しっかり覚醒、バイタル安定、静かな環境等)
- 飲み込みやすく、誤嚥しにくく、安楽なポジショニングを行う
- スクリーニングをスムーズに進めるために評価者の位置、道具の配置等を整える
- これから何をするのかを利用者様に道具等見せながら説明する
- 頸部聴診をして咽頭クリアランスを確認する
- 冷水の入ったコップを見せて視覚情報を提供し、何を飲むのかを伝え聴覚情報を提供する
- 口を開ける、口を閉じる等を端的に指示し、口腔底に注水する
- しっかり口唇閉鎖を促して頸部聴診をしながらコップの水で視覚情報提供と視線誘導をして飲み込んでいただく
- 時間を計りながら追加で空嚥下をしていただく
- 「あ~」と発生してもらい湿性嗄声などの声質を評価する
フードテストでは、これに加えて次の手順がありました。
- 見える位置でゼリーの蓋をあける
- 手に持って匂いを嗅いでもらい五感刺激を与える
- スプーンですくう様子を見せる
- スプーンは利用者様視点で操作する
- ゼリーを口に入れる角度と舌上の位置
- 発声後の口腔内(一部中咽頭)残渣確認
非常に複雑なように感じましたが、講師からは「評価前に環境を整えること、適切にポジショニングすること、 これから何をするのか説明すること、五感刺激を提供すること、水やゼリーを入れる位置、 飲み込む時にしっかり口を閉じること、視線を誘導すること、 全てが 「よりベストに近い状態で嚥下能力を評価する」 ために必要なことなのです。」と説明がありました。
これまでスクリーニング手技を経験したことがある職員が一人もおらず、 ほとんどの職員が今回の実技研修だけではうまくできませんでした。 これから職員同士で練習し、嚥下障害のある方の嚥下音や湿性嗄声などを聴き、 自分たちでスクリーニングができるようにならなければ、と強く感じました。