3月23日 ケアプラン ほっと郡元 相談室で実施した第40回 摂食嚥下勉強会 では、 これまで食事介助技術や摂食嚥下障害について学んだ中で、ふと疑問に思ったことを試してみることにしました。
1つめは「 「嚥下調整食」 って、感覚(見たり、匂いを嗅いだり、食べてみたり)だけで献立や素材がわかるものだろうか?」です。
2つめは「咀嚼する場合は前舌で、丸飲みに近い場合は舌中央が食べやすいが、より細かい 「物性による食べやすさ」 ってあるのではないだろうか? 物性によって口の中でどのように咀嚼や移送をしているか感じてみたい。」というものです。
最初に、島津乃荘 栄養科 に その日の主菜と副菜の 「極刻み食」 と 「ミキサー食」 を適温にして準備してもらった献立を、 何の材料が使われているか、味付けは何か、献立は何か、を当てられるか、参加者が食べてみました。
食べてみると「食べた事があるような味だ」「この色は~かも」「舌触りに覚えがある」というような曖昧な感覚はあるものの、 献立どころか使われている食材も明確に示すことができませんでした。献立表を見て答えあわせをして初めて 「あ~それだ」「あ~この色はその色だったのか」と、ようやく記憶と感覚が繋がりました。
食事介助の場面では、五感をフル活用してもらうために、何を食べるのか、どんな匂いがするのか、どんな食感なのか、 温かいのか冷たいのか、などの情報を提供しながら、 さらにその方の嗜好に合わせて話題を作り、認知機能に刺激を与えながら食べていただくようにします。 今回、実際に自分たちが何を食べるのかわからない状態で食べてみることで、 いかにその情報提供が大切かを実感することができました。
次に、ソフミートを使った高齢者ソフト食の肉じゃがと、先ほどの2つの食物形態で、 食べる時、口腔内でその食物をどのように扱うのが自然で負担がないのかを確認しました。
今回の献立は、スプーンですくった感覚や見た目は かなり似ています。 咀嚼なしで食べることを想定して舌中央に置くように食べてみたところ、 ミキサー食はそのまま舌が口蓋に接しながら咽頭に送り込む動作が自然とできましたが、 極刻みの場合は、意識しなくとも自然と臼歯や前舌の方に食物を移動し咀嚼様運動が起きました (意識しながらなんとかミキサー食と同じように送り込もうとしましたが、私はどうしても咀嚼しようとしてしまいました)。
かなり細かく刻まれ、物性的にも付着性、凝集性がミキサー食に近い極刻みですが、 細かいとはいえ異なる物性のものが混ざっていたり、舌触りで固形物を感じるものについては咀嚼を行おうとするようで、 咀嚼物を介助する時のように前舌の方に置いた方がかなり食べやすいことがわかりました。
最後に、ソフト肉じゃがを食べてみました。 基本的には舌を硬口蓋に押し付ける力があればすりつぶせるものなのですが、 今回は私の調理に少し問題があり、ところどころ硬さの残った部分がありました。 そのため、つぶせない、若しくはつぶすのに力が必要なものが混ざってしまい、食べていて非常に疲れました。
材料:ソフミート、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ
高齢者ソフト食は、摂食嚥下能力が落ちても普通食に近い見た目で食事を楽しむことができるという大きな利点がありますが、 適切に調理できていないと、逆に食べる方に負担を掛けることになり、 食事動作で疲労して喫食量が減ってしまうというような問題にもつながることを学びました。
後日、勉強会で使い切らなかったソフミートを使って、自宅で別メニューを作ってみました。
肉うどんは、都城市内の有名なやわらかいうどん屋さんのものを少し長めに湯がいて作ってみたところ、 すべて歯での咀嚼なしで食べることができました。しょうが焼きはお肉よりもタマネギを如何にやわらかく調理できるかが課題となりました。
今後も、様々な食物形態や物性についての知識を深め、それぞれにおいて患者様・利用者様に適切な食事介助をご提供できるよう、 学習していきます。