2017年05月の記事

第13回目となる 摂食嚥下勉強会 では、 高齢者の摂食嚥下に大きくかかわってくる「食事形態」について実践形式で学びました。
現場スタッフはソフト食※注を見ることはあっても、その中身がどのようになっており、どのような効果があり、 どのように調理されているのか、食べるとどのような性状を示すのか、などの詳細を知る機会がめったにないことから、 今回は実際に自分たちで調理して食べてみました。

敬和ヘルスケアグループ 内の各施設でご提供している食事には 「普通」「一口大」「極きざみ」「ミキサー」の食事形態がありますが、 「一口大~極きざみ」の一部をカバーする食事形態として、 管理栄養士でもある黒田留美子氏が考案された「黒田留美子式高齢者ソフト食®」が不定期に提供されています。

一般的なソフト食で最も多く簡便なのが、ミキサー食(ペースト状の食事)を型に流し固める方法ですが、 黒田留美子氏考案の高齢者ソフト食は、食材の下処理や火の通し方、調理工程を工夫することで、 見た目は普通食に近いにもかかわらず大変柔らかく、誤嚥のリスクも少ないというものです。

今回のメニューは 島津乃荘 栄養科 でも ご提供している「鶏のからあげ」と「そうめんのゼリー寄せ」です。

鶏のからあげ

ソフト食 鶏のからあげ

見た目は普通の鶏のからあげと遜色ありませんが、中身は摂食嚥下リハビリテーション学会分類2相当の食形態で、 咀嚼力や嚥下障害がある方でも安全に食べることができます。 やわらかくするためのポイントはミンチ肉とタマネギの使用なので、 比較するために「普通のからあげ」「ミンチ肉のみのからあげ」「レシピ通りのタマネギ入りからあげ」の3種類を調理しました。

食べてみた結果、タマネギを入れることでやわらかさと弾力・ほぐれやすさが加わり、 味の面でも摂食嚥下障害への対応の面でも重要なポイントとなっていることが確認できました。

そうめんのゼリー寄せ

ソフト食 そうめんのゼリー寄せ

誤嚥しやすく刻む必要があるとされている「麺」をゼリー寄せとすることで、 刻まずにそうめんを食べているという感覚をご提供することができるもので、 盛り付け方によってはつゆに浸した普通のそうめんに見えます。

食べる時は食べやすい大きさに切り分けたりすくったりできるので、 誤嚥しやすい麺状ではなく安全に食すことができます。 ゼリー部分もだし汁などで作っているので、そうめんの味を損なうことはありません。

こうして自ら体験することで、高齢者ソフト食が「安全に食事を楽しむめる」手段のひとつであることを強く認識することができました。 その一方で、調理工程は普通食と大きく異なり手間を要するため、ご提供の頻度を上げるためには 調理工程の単純化や普通食調理工程との部分一致など、様々な工夫をしていく必要があることが分かった勉強会となりました。

「ソフト食」という言葉は医療福祉業界ではよく使用されている言葉ですが、実は複数の種類があり、 きちんと統一されていません。

5月5日に行われた第12回 摂食嚥下勉強会では、嚥下評価時や直接訓練時に行う頸部聴診法を体験しました。
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頸部聴診法

頸部聴診法は、聴診できる音の種類によって病態を絞り込むことや、 目に見えない咽頭内の様子をイメージすることができるので、 特に嚥下評価時や嚥下訓練初期には必須となるものです。

今回は、一般的な聴診器を使用した方法ではなく、 両手がフリーになり複数の耳で観察できるメリットがある「咽喉マイク」を使用して行いました。

最初に参加者全員が1回ずつ試し、それぞれの呼吸音、咀嚼音、 嚥下音などを聞いた後、資料DVDのVE映像による異常嚥下音 数パターンを聞いてみます。 そして、再び自分たちの正常な嚥下音を聞き、正常な音と異常な音の違いをしっかりと確認しました。

実際に体験することで、正常な音について何度も聞き慣れてこそ異常音に気付くことができる、 ということがわかりました。 また、摂取するものや摂取時の姿勢などの違いでも音が変わってくるため、 今後の勉強会を通じて経験を積んでいければと思っています。