第52回 摂食嚥下勉強会 では、 実際に「摂食嚥下障害のある方に食べやすい食事」を作り、食べてみることで検証しました。
カロリーアップしたお粥
一般的に、高齢になると様々な活動に介助が必要になったり、耐久力が落ちてしまったりすることで活動量が減ってきます。 活動量が減るのに伴い代謝も落ち、食事量が減ってしまう場合があります。 その他にも、体調不良、義歯不適合、嗜好の変化など、様々な要因により喫食率の低下は起こりえます。
そのような場合、少量高カロリーの栄養補助食品で補うこともできますが、私たちは できるなら食事から栄養を摂り、食べる喜びを感じ、さらに食事に対する意欲も高めて欲しいと考えています。
その1つとして、食事の量を増やすことなくカロリーをアップする (若しくはカロリーを維持したまま食べ切れる量に減らす)方法があります。
今回は、腎疾患等でタンパク制限があっても使用できるタンパク質0(ゼロ)の製品(粉飴)を使用しました。
カロリー計算は、ご提供した食事を全て食べきった場合の数値になります。 例えば、155g(おおよそ茶碗1杯分)のお粥のカロリーは約113kcalですが、 全てを食べきらなければ目標とするエネルギーを摂取することはできません。 そこで、喫食率が落ちてしまい茶碗1杯分を食べきれない方を想定し、次の2種類のお粥を準備しました。
- 130gのお粥に粉飴を6g加えて約117kcalとしたもの
- 100gのお粥に粉飴を12g加えて約118kcalとしたもの
(1)は喫食率が84%程度、(2)は喫食率が65%程度の方であれば全量食べる事ができることになります。 こうして食べきれる量に調整することで、目標エネルギーを摂取できることになります。
粉飴は、お粥だけではなく飲み物や料理に加えることもでますので、 食事から十分な栄養を摂って欲しい場合の一つの選択枝として活用できると言えるでしょう。
パン粥
パンは、口腔内の水分を吸収し、十分な粉砕と唾液との混和、食塊形成ができないと、口腔内に貼りついて溜め込みの原因になります。 認知症等の影響で溜め込みが増えると、何かの切っ掛けで咽頭の方に流れてしまい、窒息に繋がることもあります。
パン粥は離乳食でも使用される小さくちぎったパンを牛乳で煮てお粥状にしたものです。 介護食の場合は流動速度の調整と不均一な性状の解消のために、とろみ剤と一緒にミキサーにかけて作ります。
今回は、厨房の調理負担も考慮し、市販の介護食用のパン粥ミックスを使用して作りました。
この製品は熱湯と撹拌して10分ほど待つことで手軽に作ることができるもので、急な要望にも応えることが可能です。 お粥と同じ113kcal以上で計算したところ、約105gで123kcalのパン粥を作ることができました。 粉飴と同様、カロリーに対する量が少ないことから、喫食率が低下している場合に活用できることが分かります。
摂食嚥下障害や口腔の状態からミキサー食しか食べられない方は、パンをそのまま食べる事はできないため、 現在はパンの日にもお粥をご提供しています。 パン粥であれば目標エネルギーもクリアしつつ、(味だけとはいえ)パンをご提供することができることを確認できました。
実際に食べてみる
利用者様に食べていただくものは、まずは自分たちで食べてみて、 味や風味、食感、咀嚼や嚥下時の物性などを確認しておくことが大切です。 今回使用した粉飴の甘さは砂糖の8分の1程度と言われていますが、(2)については甘さを明確に感じました。 一方(1)については意識しなければ違和感がないほどの味でした。
実際に作って食べてみることで、導入の可能性や改良すべき点、介助時の注意点などを確認できました。 今回の内容を、今後の食事支援の場で活かしていきたいと思います。