2017年09月の記事

今回は、KTSM(NPO法人 口から食べる幸せを守る会)実技セミナーの内容から、 食事介助を行う際のベッド上及び車椅子座位時のポジショニングについて、 セミナー受講者による技術伝達を行いました。

ベッドアップ30度

修正前

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-1
  • ベッドアップの角度が十分でない(写真は25度程度)
  • 肩から上腕にかけてのサポートがなく腕の重さで頸部周りに緊張が残り、肩甲帯も伸展しやすい
  • 足底のサポートが十分でないため時間が経つとずり下がりが起き、骨盤後傾になる可能性がある

セミナー参加者による見本

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-2
  • クッションを体に沿わせるように肩から腕全体をサポートする
  • クッションの下端を少し体の上にかぶせると腕と手が安定(自由度が高い)状態になる
  • 足底はクッションをバスタオルで巻き、バスタオルの片側を下腿の下に敷きこむことで、下腿の重さでクッションが下に下がることを防ぐ
  • 足底が上に浮いて踏んばらないといけない状態になることを防ぐため、必ず踵を溝に接地するように調整する
  • オーバーテーブルは、みぞおちから拳1つ分くらいの高さと距離に配置すると、介助時の操作性と視覚情報の提供に良い

ベッドアップ45度

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-3
  • 肩や腕の重さがかかるようになるため、クッションの下にさらにバスタオル等使って腕全体を楽にし、頸部周りに緊張がない状態にする
  • 頭部は30度よりも浅めに2つめの枕を配置すること、で頸部角度を調整する
  • オーバーテーブルにトレイをそのまま置くと奥の皿や皿の中が見えにくいため、フェイスタオル等でトレイに角度をつけて見えやすくする

ベッドアップ60度

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-4
  • 60度からは咀嚼が必要な食事になるため、セルフケア強化のために手を使える状態にする必要がある
  • 腕はタオル等でテーブルとの接触を保護するとともに、肘をつけたままで口に届く角度と高さに調整する
  • 利き手でない方の手も必ずテーブルの上に乗せて片方の頸部に力が加わらないように留意する
  • 利き手ではない方の手も、皿を支えるなどの補助動作に使えるよう支援する
  • 頭部は軽く前屈するポジションに調整する
  • トレイの横幅が広く操作しづらい時は、トレイを縦に配置して使いやすくするのもよい

車椅子座位

悪い例

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-6
  • 肘がテーブルから落ちるため、肘を上げられない人はスプーンを口に運ぶために極端な頸部前屈位をとる必要がある
  • 車椅子にもたれた状態から上半身を前にかがめるためにかなり体力を消耗し、食思が減退する

良い例

摂食嚥下勉強会「食事介助時ポジショニング」の様子-5
  • カッティングテーブルがない場合、クッションとタオルで高さ調整と腕の保護を行うことで、軽い前屈位で無理なく捕食できる
  • 車椅子はシートが落ち込む真ん中と後ろの部分にタオルなどをセットして座面全体がフラットに近い状態にすることで、 臀部の落ち込みによる姿勢の崩れをなくし体幹が安定する

実際の現場で「正しい食事姿勢」を実施することで、患者様や利用者様に適切な支援を行っていけるよう、 これからも得られた情報を職員に伝える必要性を感じました。